母: お隣からおいしいチョコレートをもらっちゃたわ。箱から出してみんなに1個づつ配って。
妹: はーい。あ、4つある。1つ余るから、もう1つ私がもらっていい? 姉: そんなのずるいよ。ジャンケンで決めようよ。 母: 母さんはジャンケンは弱いから、ジャンケンはいやよ。 姉: えー、お母さんも仲間にはいるの? じゃあクジ引きにしよう。いいでしょ? 妹: いいよ。姉ちゃんクジを作って。 姉: よし、3枚のカードのうち、一枚に「アタリ」と書いて伏せてと。よくかき混ぜるよ。 妹: じゃあ、私が引くわよ。 姉: まだ見ちゃあだめだよ。次は母さん引いて。 母: どっちにしようかな? こっちにしよう。あら、ハズレだわ。 姉: 母さん、もう見ちゃったの。じゃあ、私は残りのこれだね。 妹: 姉ちゃん、私はまだ見ていないから、姉ちゃんのと取り替えてもいい? 姉: え!一度決めたことは変えない方がいいと思うけどな? でも、替えたかったら替えてもいいよ。 妹: じゃあ、替えよっと。 そこに父(私)が帰宅。 父: にぎやかだな。何をしているんだ? ...うんうん、クジ引きか。...ちょっと待てよ。なんだか、おかしいな。姉ちゃんはそれでいいのかい? よーく考えないと損するぞ。 母: 父さんたら、今日も酔っぱらって帰ってきて、変なこと言わないでよ。 『だいたいだな。お隣さんがどうして4つチョコレートを下さったのか。内が4人家族だからじゃあないか。1つは父さんのものだということに誰も気が付いていないとはどういうことだ。』と父は密かに思うのであった。 さて、このクジ引きでチョコレートをもう一つゲットしたのは姉か妹かは知らない。しかし、ほんとうにこのクジ引きは公平なクジ引きになっていたのだろうか。 (2000. 8.15)
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三枚のカードのうち、1枚が「アタリ」、他の2枚は「ハズレ」であるクジ(ハズレ ハズレ ★アタリ)を一回ひくことになったとしよう。ただしこのクジのやり方はちょっと変わっている。あなたが1枚ひいた後結果は知らせられないで、クジの担当者が残りの2枚のうちハズレのカードを1枚だけ抜いてくれる。その後、あなたは最初ひいたカードのままにしてもいいし、あるいはもう1つの方に変えてもいいという。さて、あなたはどうする? 正解は、「最初に引いたカードのままではなく、必ずもう1つのカードの方に変えるようにする。」である。なぜなら、最初に引いたカードのままの場合のアタリの確率は1/3、もう1つのカードの方に変えた場合のアタリの確率は、2/3であるからである。*) 初めてこの話を聞いたときは、すぐには理解できなかった。最初にアタリのカードを引く確率は確かに1/3である。2度目のチャンスを与えれれたときは、1枚が「アタリ」、他の1枚は「ハズレ」であるから、この2枚のどちらもアタリである確率は1/2であると思えたからである。 そこで、次のように考えて見た。1000枚のカードのうち、1枚が「アタリ」、他の999枚は「ハズレ」であるクジがあるとする。最初1枚のカードを引いてそれがアタリである確率は、1/1000であり、残りの999枚の方にアタリがある確率は999/1000である。この段階でもう一度チャンスが与えられて、引いた1枚と、残りの999枚の全部と、どちらを選びますか?、と言われたなら、だれでも999枚の方を選ぶ。ただし、999枚の方は、その中の998枚のハズレのカードは前もって抜いてしまわれて残り1枚になっているとしても、このカードがアタリである確率は999/1000には違いないのである。 それでは、これと似たような次の話**)についてジックリ考えていただきたい。太郎、次郎、三郎の3人の囚人がいた。そのうち2人だけが処刑されることになったが、看守は誰が処刑されるかということについて漏らしてはならないことになっていた。太郎は、看守に尋ねた。「少なくとも次郎と三郎のうちどちらかが処刑されるのは確実だ。どちらが処刑されるのか教えてくれても、私が処刑されるかどうかはわからないから、あなたが守秘義務を怠ったことにはならないはずだ。どうか教えてくれ。」 看守は、太郎の言うことはもっともだと考えて、「次郎は処刑される」ことを教えた。 それを聞いた太郎は、ちょっと安堵した。なぜなら、何も知らないとき自分が処刑される確率は2/3であったが、次郎が処刑されることがわかったから、あと処刑されるのは自分か三郎のうちのどちらかなので、自分が処刑される確率は1/2でしかない、と太郎は考えたからである。本当にそうだろうか? (看守が、「三郎は処刑される」と答えたとしても......?) 参考書:*)田中義厚著「確率の人生学」(青春出版社) **)数学セミナー増刊 入門現代の数学[10] p.154(日本評論社) |
知っても得しない話 (3人の囚人の問題の答え) : 太郎の考えは間違い。看守から 「次郎は処刑される」 と聞いた後の状況で、 太郎が処刑されない確率=1/3 次郎が処刑されない確率=0 三郎が処刑されない確率=2/3 である。(注:三郎が処刑されない確率が上がるのである。) 解説: 看守が 太郎に 「次郎は処刑される」 と答えたことの意味をよく考えなくてはならない。 (1) 「太郎が処刑されない」 ことが決定していたとする。 このとき、処刑されるのは次郎と三郎であるが、看守がそのどちらかを言うので 「次郎は処刑される」 という確率は 1/2 である。 (2) 「次郎が処刑されない」 ことが決定していたとする。このとき、看守が 「次郎は処刑される」 という確率は 0 である。 (3) 「三郎が処刑されない」 ことが決定していたとする。このとき、処刑されるのは太郎と次郎であるが、看守が 「次郎は処刑される」 という確率は 1 である。 また、看守が言う前の状況で (4) 太郎が処刑されない確率=次郎が処刑されない確率=三郎が処刑されない確率=1/3 である。 さて、 z1=(看守が言う前に、太郎が処刑されない確率)×(看守が 「次郎が処刑される」 という確率)=1/3・1/2=1/6 z2=(看守が言う前に、次郎が処刑されない確率)×(看守が 「次郎が処刑される」 という確率)=1/3・0=0 z3=(看守が言う前に、三郎が処刑されない確率)×(看守が 「次郎が処刑される」 という確率)=1/3・1=1/3 また、 z=z1+z2+z3=1/2 (看守が「次郎が処刑される」という確率。 残り1/2は看守が「三郎が処刑される」という確率) とおく。 したがって、 看守が 「次郎は処刑される」 と答えた状況で 太郎が処刑されない確率=z1/z=1/3 次郎が処刑されない確率=z2/z=0 三郎が処刑されない確率=z3/z=2/3 となるのである。 知らないと損することもあるけれど、知っても得しないこともある、ってこと。 |