> 『数学的思考(?)エッセイ』 の試み

16. これって負け惜しみか?
 今年の日本シリーズはダイエーの2連勝…まではよかったが、その後4連勝した巨人が日本一になってしまった。福岡に住む私としてはダイエーを応援していたので残念である(ほんとうは私は出身が広島県なので子供の頃からの大のカープファンである)。ところで、ほんとうに巨人がダイエーより強いのか? 早い話がもし、日本シリーズは1試合のみで決着を付ける、ということだったならばダイエーが日本一ではないか。あるいは、先に2勝したら優勝、ということでもダイエーが日本一ではないか。なぜ先に4勝しなくてならないのだ。それなら先に5勝したら優勝ということだったらもしかしてダイエーが逆転していたかもしれないじゃあないか。とやや感情的に屁理屈を並べてみても、ただ見苦しいだけの負け惜しみでしかないだろうな。ここはひとつ潔(いさぎ)よく…、うーん、潔わるくせめて冷静に考えてみよう。
 巨人とダイエー戦はひとまず置いといて、ここでは客観的に冷静沈着に考えてみよう。まず、AとBの2チームの内のどちらが真に強いのか、はどうして決めるのかをはっきりしておかなくてはなるまい。N(N=1,2,3,…) 試合して、Aがa回勝ち、Bがb回勝ったとすると(ただし、a+b=N)、Aの勝つ確率は P=a/N、Bの勝つ確率は P=b/N=1−P である。P>P のときAがBより強い、ということにしよう。問題は試合数Nをいくつにすべきかである。ちなみに日本シリーズは先に4勝した方が優勝ということなので、N=7 にしていることなる。しかしながら、Nはできるだけ大きいほうがよく、理論的にはN→ ∞ であるべきである。よって、
  [定義]AがBより真に強いとは P>P (N→ ∞)である、また逆に、P>P (N→ ∞) のとき AがBより真に強い。
のように決める。待てよ。実際には無限回の試合をやることはできない。そうか。そこに我々の疑問と不満が残るわけだ。つまり、何試合かをしただけで日本一を決めるというけれど、それはただ優勝チームを決めるということであって、日本一強いチームを決めることではないのだ。
 では、日本シリーズで優勝したチームが負けたチームより強い、と言った場合の誤った判断の確率を考えてみることにしよう。いま無限回戦ったとして、勝つ確率PのチームAと、PのチームBとがあって、P>Pと仮定しよう。さて、
 [ルール]この2チームの内先にn勝した方が優勝とする。すなわち 試合数N=2n−1 で決着をつける。(実際には、どちらかのチームが先にn勝したらそこで終了である。)
としよう。このとき A が優勝する確率は2項定理あたりを用いて、
 α=C(N,0)P+C(N,1)P(N−1)+C(N,2)P(N−2)+ … +C(N,n−1)P(N−n+1)(n−1)
であることが示せる。ここで、C(N,r)はN個の異なる物からr個選ぶ場合の数である。
 N(N=1,3,5,…) の値に対して、αがどのような値をとるかを、例として P=0.6 としたときの計算結果をグラフに示した。P>0.5 なのでNが大きくなればなるほどAが優勝する確率αは1に近づくことは言うまでもない。

  =0.6 としたときのN試合でのAの優勝確率
 Nα
 10.600
 30.648
 50.683
 70.710
 90.733
110.753
970.977

  さて日本シリーズは試合数N=7である。この例の場合だと N=7のときα=0.710 なので、
 巨人が優勝したので巨人が強い、という判断が間違っていない確率は 0.710
でしかない。逆に
 巨人が優勝したけれどダイエーが強い、と判断しても間違っていない確率は 0.290
もある、ということになる。この数値で、胸を張って「それでもやっぱりダイエーの方が強いもんね。」と言っていいものかどうかは謙虚な私には自信がない。ただ、P=0.6 の値が妥当なものなのかはわからないし、大体Pの値は誰にも永遠にわからないのだから...結局我らのチームを信じるものが救われる?
(2000.11. 4)
 二項定理:(p+q)=C(N,0)p+C(N,1)p(N−1)q+C(N,2)p(N−2)+ … +C(N,N)q
 右辺の展開式における係数C(N,r)=N!/{(N−r)!r!} (r=0,1,2,…,N) を二項係数という。

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