> 『数学的思考(?)エッセイ』 の試み

63. 薬が薬を必要とし
 昨年5月に病気を患い入退院を繰り返している。
 今回はその後の病状と薬治療の効果を見るための検査ということで10日間の予定で入院した。病状は問題なくむしろ改善してきているらしく、今までの薬投与はもう必要なかろうということになった。
 さらに回復を目指して、新しい薬を試してみることになったのはいいのだが、その副作用で菌に感染しやすい体になっているとのことで、結局4週間も入院させられた。だが、今度の薬は直接体調を崩すようなものではなく、むしろ食欲が出て何を食ってもうまく感じる。お陰で入院生活といっても穏やかな気ままなものであった。

 病室では、イラストロジックというパズルを解くプログラムに熱中した。一日中、そして何日もひとつのことを考え続けることができ、学生の頃のような幸せな気分である。  かなり長くて複雑なプログラムになると、ちょっと一部分を変更したためにあちこちに影響してうまく動かなくなる。どこがおかしいのかを思考し、思考しても解らなければいろいろ試してみて探すのだが、これが一日がかりになる。こんなことの繰り返しで、あっというまに4週間が楽しく過ぎた。
 そして一日ごとに、パズルを解く時間が短縮され、あるいはサイズの大きな問題が解けるようになっていくのが、なんともうれしい。しばらく忘れていた研究開発の面白さである。進歩発展が目に見えるということは、大きな喜びである。

 薬治療ということで、今は朝起きてすぐ1種類、朝飯後5種類、昼食後2種類、夕食後4種類の定められた錠剤を飲む。治療のための薬は2、3種類なのだが、それらの副作用で骨がもろくなったり、血糖値が上がったり、胃が荒れたりするのを抑えるために、こんなに何種類もの薬を飲まなくてはならないのだそうだ。他にも湿疹ができたり、個人によっていろいろな副作用が出ると、それらの治療のための薬を飲んだりすることになる。そして、薬の治療効果や副作用の程度を調べるために、たびたび血液検査などが行われる。
 程度の差はあれ副作用のない薬はなく、そのため薬が別の薬を必要とし、さらに別の薬を必要とし、…。

 ひとつの大きく複雑な構造で機能しているものは、どこかちょと変更したり付け加えたりすると、その影響があちこちに現れ、その修正のためにさらに別なところに影響が現れる。それらを前もって見い出し、すべてを修正することは人間の能力を超えている。薬治療でそれを体感し、イラストロジック解法プログラム (HTML版) (Java版) 作成でそれを楽しんだ、1ヶ月の入院生活であった。
(2004. 5. 1)

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