”願わくは30のハノイの塔の成就するまで” 昨年(2003年)、病気入院したとき考えたのである。もし閻魔大王様から、「お前は、あと何日生き永らえたいのか?」と問われたならば、このようにお答え申し上げようと。 ハノイの塔とは、 ”3本の塔があり、その1本の塔に何枚かの円盤が大きい順に積んである。これをすべて他の塔にそっくり移し変えろ” というものである。ただし、次の3つの条件がある。 (1) 一回に一枚の円盤しか動かしてはいけない。 (2) 移動の途中で円盤の大小を逆に積んではいけない。すなわち、常に大きい方の円盤が下になるようにする。 (3) 塔以外のところに円盤を置いてはいけない。 高校で学んだ等比数列の公式などを用いて、n枚の円盤の場合の掛かる手数N(n)を計算してみると、 N(n)=2n−1 を得る。したがって、30枚のとき、N(30)=230−1=1073741823回 となる。1回の手数に1秒掛かるとすると、これは約12427日≒34年である。あとこれだけ生かせていただけるなら幸せでございまする。 ところで、閻魔様から 「よかろう、そちの望みを叶えてやろう。ただし、円盤を移し変える業を自分でするのじゃ。途中手を休めて寿命を延ばそうなどと不埒なことを考えてはならん。」 と言われかねない。生き永らえるのはいいが、円盤を移し変える業に残りの人生すべてが費やされるのではたまらない。 そこで、パソコンでこの業を行うことを考えた。といっても30枚の円盤を扱うには、私のパソコンでは荷が重過ぎる。とりあえず、11枚までできるものを作ってみた。 眺めているとなかなかおもしろい。おもしろいのであるが、ちょっと退屈である。そこで、実際の円盤なら移し変えて落とせば周りに音が響き渡るに違いない。ということで、音を付けることにしたのである。 検索してみると、ハノイの塔で音楽を作っている方がおられた。「ハノイの塔の音楽」というサイトで、音を付ける際の規則を作って曲にしてある。規則は無数に考えられるので、独自の規則により新たな曲を作り楽しむことができる。 だが、ここでは曲を作るというよりも、この業を実際に行ったときどんな音の響きになるかということに着目する。 まず、円盤を塔から引き抜き、別な塔に差し込み落とすとき音がするわけであるが、落とす円盤自体ではなくて、それを受け止める円盤が音を出すとする。音の高さ(音程)は円盤の大きさによる。すなわち、小さい円盤の出す音は高く、大きな円盤は低い。また円盤が落ちるとき、こすれて塔が音を出すとする。音の高さ(音程)は余っている塔の長さが短いときは高く、長いときは低い。これら2つの音は、次の円盤を塔から取り出し別の塔に落とすまで鳴り響くとしよう。 このようにして、とても音楽とは言えないがこのようなものができたのである。 (2004.10.21)
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