> 『数学的思考(?)エッセイ』 の試み

84. 適当にやった方がいいこともある
 長く生きていれば、「最善を尽くすより適当にやった方がいい結果になる」 こともある、ということぐらいは分かっているつもりである。だからときに、「まあ適当にやった方がいいよ」 としたり顔で発言したりする。
 だが、「どんなときに最善を尽くすより適当にやった方がいい結果になるのか」 ということが分かって発言しているのではなく、たいていの場合 「最善を尽くしたくないだけの方便の発言だ」 と見抜かれていてはしようがない。ただ、なんら世のため人のためになることもできずとも楽しく生きてこられたのは、このような生き方のお陰であると信じる私は、これは深く考察しなければならないものだとは思っていたのである。

 ところで、「リバーシ」 というゲームをウェブページに作ろうと思いたった。リバーシとはオセロのことであるが、「オセロ」 は登録商標だそうで、一般名は 「リバーシ」 というらしい。黒色と白色の石を交互に打つ2人で戦うゲームであるが、相手の石を挟むところに石を打てば、挟んだ相手の石を自分の石の色にひっくり返せる。最終局面での石の数の多さを競うゲームである。
 相手をコンピュータにさせるものを作ろうと、あれやこれやとやっているうち、「最善を尽くすより適当にやった方がいい結果になる」 ことがある、という実例を発見したのである。

 コンピュータに相手をさせるからには、少しは強くなければおもしろくない。石が置けるところを探して適当に打たせたのでは、初心者にも勝てないのである。
 コンピュータなら何手先までも読めるだろうと思われるかも知れないが、リバーシは、最終局面で自分の色の石が相手のものより多くなくてはならないわけで、いくら途中で自分の石が多くてもだめである。だから、最終局面まで先を読まなくてはならない。これはいくらコンピュータでも大変なことだ。ウェブページで遊ぶためのものでは大きな容量は避けたいので、がむしゃらに先を読むことは諦めざるを得ない。

 実際に何回かゲームをやってみると、4つの隅に自分の石を置くと非常に有利であることがわかる。なぜなら、隅に置いた石はもう絶対にひっくり返されることはないからである。そこで、とにかくこれら4隅に自分の石を置くことを目指す。これだと2、3手先まで読むことはできる。このようなことを考慮して打つ手を決めることを、思考手と呼ぶことにする。すなわち、

 思考手 隅に打てるならそこに打つ。隅に打てないなら、その時点で自分の石が最大になるように、さらに、そこに打ったために相手に隅を取られてしまうことにならないように、ということまで調べて打つ。

 これに対して、

 ランダム手 石が置けるところを調べ、いくつかあれば、その中でランダムに置く位置を決めて打つ。

 実際のゲームでは、あなたがコンピュータを相手に戦うわけであるが、コンピュータ同士で戦わせてみたら、どういうことになるだろうかという興味が起こる。 例えば、黒石(先手)はランダム手を打ち、 白石(後手)は思考手を打つ設定で何回もゲームを行なわせて、それぞれの勝率を調べてみるのである。
 いろいろな設定で何回か実際に試してみると、それぞれの場合の先手と後手の勝率が得られる。


※ いろいろな設定でお試しください。


 次の4通りの設定で、それぞれ 10万回づつゲームを行なわせてみた( 10万回とは、よっぽど暇人だと思われるかも知れないが、画面表示をさせないで行えばほんの数分でやってしまうのである)。その結果、次の表のようになった。


黒石(先手) 勝率
引分率
勝率 白石(後手)
(1) ランダム手 0.45
0.05
0.50 ランダム手
(2) 思考手 0.83
0.02
0.15 ランダム手
(3) ランダム手 0.14
0.02
0.84 思考手
(4) 思考手 0.0
0.0
1.00 思考手


 (1) は、先手、後手共にランダム手を打った場合には、わずかに後手がよいことを示す。このことは、リバーシというゲームは本来、後手必勝のゲームではなかろうかと思わせる(既にどなたかが証明しているのかも?)。
 (2)、(3) が示すように、一方が思考手を打った場合には、やはりその方が圧倒的に勝率がよい。やはり、なにも考えない適当な手を打つよりは、思考した方がよさそうである。
 (4) は、共に思考手を打った場合には、後手の完勝であることを示している。

 ところが、(3)、(4) の結果を比較して注目してほしい。後手が思考手を打ってきた場合には、先手は、思考手を打ったなら完敗であるのに、ランダム手を打ったときはわずかでも勝っている場合があるのである。

 ここで用いた思考手は、上で述べたように、もちろん完璧なものではない。しかしながら、実際に我々が思考するとしても、せいぜいこの程度であろう。

 ここに至り、次の語録を得るのである。

 語録:この程度の思考をしてくる相手に対しては、同じ程度の思考をして相手をするより、むしろ何も考えないで適当にやった方が勝つチャンスが生まれる

 なぜ、このようなことが起こるのだろうか。まず考えられることは、思考するということは考える範囲を狭める危険性をはらんでいる、ということである。とても正解とは思えないような手が実は正解である、ということもあるのである。だから、何も考えないで、でたらめに打った手が正解であったということであろうか。

 ○ まず物事は、こちらが先にしかけるべきか、しかけられるのを待つべきか、よく見極めるべし。
 ○ 先手必勝の物事に対しては先手をとり、後手必勝の物事に対しては後手をとり、最善を尽くすべし。
 ○ 先手必勝の物事に対して後手になったとき、あるいは、後手必勝の物事に対して先手になったときは、
   完璧な相手であるなら、どうあがいても完敗であるから、適当にやるべし。
   完璧ではない相手であるなら、自分が相手より実力が上であるなら最善を尽くすべし。自分が相手と実力が同程度ないしは下なら、最善を尽くさず適当にやるべし。そのほうが勝つこともある。

 いかがであろうか。ただし、この語録の使用にあたっては、かなり高度の判断を要するので、各自の責任において使用してほしい。よい子の皆さんは、やはり、いつでも最善を尽くし、けっして適当な生き方をしないようにしましょう。
(2005. 7.17)

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 8×8盤のリバーシは、コンピュータでもなかなか扱うには大変である。そこで、4×4盤のものを徹底的に調べてみたら、この場合は、後手必勝であることがわかった。

 相手をするコンピュータを TERUBOY(テルボーイ)と名付けた。TERUBOY と対戦してみてほしい。
 最初は、あなたが 白石(後手)、次回からは、勝った方が黒石(先手)である。

      4×4盤 TERUBOY

 あなたが黒石(先手)のときは、絶対に勝てません。なぜなら、TERUBOY は、後手必勝の手を使ってきますので。あなたが白石(後手)のときは、本来はあなたが勝つはずですが、TERUBOY は最善を尽くしてきます。

 ここまで相手が完璧であれば
 ○ あなたが先手のときは、最善を尽くそうが適当にやろうが、結果は完敗です。適当にやりましょう。
 ○ あなたが後手のときは、最善を尽くせば勝てます。適当にやっては勝てないでしょう。頑張りましょう。

 6×6盤でも、あなたが黒石(先手)では勝てません。 Reversi 6×6盤(最強)
 8×8盤は、最強ではありませんので 黒石(先手)でも 白石(後手)でも勝つことができます。
                            Reversi 8×8盤


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