> 『数学的思考(?)エッセイ』 の試み

92. この世でもっとも美しい命題
   e +1=0

 これはオイラーの式として知られている数式で、この世で もっとも美しい数式の一つであると言われている。小説「博士の愛した数式」(小川洋子著 [新潮社])にも出てくる。
 e(自然対数の底)、i(虚数単位)、(円周率)という記号は、オイラー(Leonhard Euler, 1707年〜1783)というスイスの数学者によって用いられ、これらの間に成り立つ関係式として、オイラーによって見出されたものである(「不思議な数 の伝記」(Alfred S.Posamentier, Ingmar Lehmann 著、 松浦俊輔訳 [日経BP社]))。
 e、i、 は、この式が成り立つように定義されたものではなく、この式とは関係なくかつ別個に定義された数であるにもかかわらず、このような簡単で美しい関係が成り立つというのである。すなわち、このような関係が成り立つように、オイラーがこれらの記号の意味を勝手に定義し、俺ら(おいら)の式だ、と言ったというのではない。

   e  = −1

とも書かれる。

 e 人に、i を いっ 情 すれば、マイナス をみる この世哀しき  (よかひよかとき「冗談短歌集」より)

 「 嘘をつかず誠実に、 隣人を慈しみ争わず、 労をいとわず勤勉にすることが、 最も楽しく楽な生き方である 」

 と言われたとする。しかしながら、この言葉には意味はない。なぜなら、「嘘をつかず誠実」、「隣人を慈しみ争わず」、「労をいとわず勤勉」にするということがどうすることなのか、また、「最も楽しく楽な生き方」ということがどういうものなのか、について何も述べていないからである。
 いま、「嘘をつかず誠実」、「隣人を慈しみ争わず」、「労をいとわず勤勉」 にすることの意味が互いに別個に、かつ 「最も楽しく楽な生き方」 とは関係なく定義されていて、さらに、「最も楽しく楽な生き方」 というものが、先の3事項とは関係なく定義されているとする。その上で、上の命題が成立することが示されるならば、これは “この世でもっとも美しい命題” のうちの一つと言われてもよい、と、私によって勝手に思われている。
(2006.11.25)

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